今年、沖縄県と神奈川県で
塵芥車による巻き込み死亡事故が発生しました。
時間が経った今でも、同じ業界に携わる者として胸が痛みます。
亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、
事故を「風化させないこと」こそが、
同じ機械に関わる私たちの責任ではないかと感じています。
塵芥車は、生活に欠かせない“働く車”。
しかし構造上、ひとたび危険領域に近づくと命に関わる機械 でもあります。
事故の詳細には触れませんが、
この機会にあらためて
「なぜ巻き込み事故が起きてしまうのか」
そして
「どうすれば防げるのか」
を整理し、
年末の繁忙期を前に安全意識を高めるきっかけになればと思います。

■ なぜ巻き込み事故が起きてしまうのか
今年の事故を踏まえ、
現場で巻き込みが発生する状況を整理すると、
多くの事故は 機械トラブルではなく、作業中の“何気ない行動” から起きています。
以下の2つが典型的な要因として挙げられます。
1. 押し戻されてくるゴミを手で抑えようとしてしまう
巻き込み動作の途中で、
投入したゴミの一部が手前側へ戻ってくることがあります。
この“戻り”を抑え込もうとして、
反射的に手を伸ばしてしまう。
背景には、
- 一度に多く巻き込みたい
- 効率を上げたい
- あと少し押し込めば終わる
といった効率優先の心理が働いています。
しかしこの行動こそが、
最も巻き込み事故につながりやすい危険な動作です。
安全より効率を優先してしまうと、事故が起きた瞬間にすべての意味を失ってしまいます。
命を守ることが何より重要です。
2. プレスプレートが“危険な位置まで下降して来ている”のに投入してしまう
パッカー車の巻き込み動作を担う
プレスプレートは上下に動く構造 です。
重大事故につながる典型的なケースが、
プレートが下降して危険位置にあるにもかかわらず、
早く終わらせたい心理で投入してしまうこと。
下降中、あるいは下降しきっていない状態では、
投入物と一緒に
作業者の手・腕・身体が巻き込まれるリスクが極めて高くなります。
事故を引き起こす背景としては、
- 作業の慣れによる危険感覚のマヒ
- リズム作業での確認不足
- 「このくらいなら大丈夫」という思い込み
- 現場の“急ごう”という空気 など
こうした心理・環境要因があります。
ですが、
「プレートが下降している時は絶対に投入しない」
という基本ルールを徹底するだけで、多くの事故は防げます。
■ 年末に向けて、ゴミの量・作業量は確実に増えます
一般家庭のゴミも、企業の廃棄物も、
年末にかけて一気に増えていきます。
- 作業量が増える
- 回収件数が増える
- 人手不足が進む
- 疲れが溜まりやすい
- 早く終わらせたい心理が強まる
こうした状況は、
危険への感度が下がり、危険領域に無意識に近づいてしまう
という非常に危険な状態を生みます。
だからこそ、繁忙期の前に安全確認を徹底することが重要です。
■ 今日から徹底したい、巻き込み事故を防ぐ3つの基本
難しい専門知識ではなく、
現場で本当に必要な“基本行動”だけをまとめました。
① 積込み部には、どんな状況でも手を入れない
押し戻りを抑えるための“ちょっとした動作”が、
巻き込み事故の最大原因です。
② プレートが下降している時は、絶対に投入しない
プレートの下降中・下降しきっていない状態は、
投入してはいけない絶対のタイミングです。
急ぎよりも、安全を優先してください。
③ 使用前点検を“1分だけ”でも必ず行う
始業時に、まず 積込み動作の確認 を行い、
必ず 緊急停止スイッチの動作確認 をしてください。
ここで重要なのは、
これは単なる機能チェックではないということです。
自分が“危険な状態にある”と想定し、
その瞬間に反射的に緊急停止スイッチを押せるかどうか
を体で覚えるための訓練 です。
日頃からこの訓練を重ねておくことで、
万が一の時に“体が勝手に動く”状態をつくることができます。
緊急停止が“間に合うかどうか”は、
命を守るうえで極めて重要な要素です。

■ 労働災害ゼロは“理想”ではなく、私たちが守るべき約束です
私は、
「労働災害は絶対ゼロでなければならない」
と強く思っています。
それは綺麗事ではなく、
現場で働く人の命を守るために必要な、
当たり前でありながら最重要の目標です。
作業に関わるすべての方が
今日も無事に家へ帰れるように。
そして、
事故やケガのない社会を、みんなでつくっていけるように。
年末の繁忙期こそ、
安全第一で乗り越えていきましょう。








