こんにちは。井野口自動車整備工場の井野口誠です。
近年、造園業でも塵芥車(ごみ収集車)を活用するケースが年々増えています。しかし、すべての現場に同じ車種が適しているわけではありません。
「塵芥車って、種類によってそんなに違うの?」と思われる方も少なくありません。
今回は、塵芥車の主な種類と造園業での向き・不向きをわかりやすく解説します。
1. 塵芥車の主な種類と特徴
(1)積込み方式
塵芥車は、大きく分けてプレス式(圧縮式)/回転板式/ロータリー式の3タイプがあります。現在では、プレス式と回転板式が主流です。
プレス式(圧縮式)
- 特徴:油圧でごみを押し固めながら積み込む方式。かさを減らし、積載効率を高められる。
- 造園業向けポイント:剪定枝や落ち葉など、かさばる草木を効率的に圧縮できるため、運搬回数の削減に効果的。
- 注意点:力は強いものの破砕専用機ではないため、直径の太い枝や硬い木を無理に投入すると積込みプレートを損傷する恐れがある。また、水分を多く含む草木は重量が急増し、過積載の危険あり。雨天や芝刈り直後は特に注意。
回転板式
- 特徴:回転する板でごみをかき込み・押し込む方式。構造が比較的シンプルで軽量。もともとは生ごみや雑芥回収を想定して設計された。
- 造園業向けポイント:小規模な現場や軽量物回収に向く。狭い道や住宅街でも機動性を発揮。
- 注意点:枝が長すぎたり投入方向を誤ると板に挟まり、機械が停止することがある。投入前に短く切り、向きをそろえることが望ましい。
ロータリー式(荷箱回転式)
- 特徴:円形ドラムを回転させながらごみを巻き込む方式。連続投入が可能で汚水の飛散が少ない。回転板がないため巻き込み事故のリスクが低く、安全性が高い。
- 造園業向けポイント:安全性重視の現場や長時間作業に向く。雨天でも作業効率が落ちにくい。
- 注意点:構造上、積載できる容量がやや少なめで、大量回収には不向き。
(2)排出方式
- 強制排出式(排出板式)
- 特徴:荷箱内部の排出板を油圧で前進させ、ごみを押し出す方式。最後まできれいに排出できる。
- 造園業向けポイント:枝や草木が荷箱に貼り付かず、掃除の手間を削減できる。水分を多く含む草木にも対応可能。
- 注意点:小枝や葉が排出板裏のスペースに入り込むため、定期的な清掃が必要。
- ダンプ式排出
- 特徴:荷箱を後方に傾けて(ダンプアップして)重力で排出する方式。構造がシンプルで故障が少ない。
- 造園業向けポイント:荷箱内の清掃が容易でメンテナンス性が高い。
- 注意点:圧縮された枝や葉は重力だけでは排出しきれず、人力補助が必要になる場合がある。
(3)大きさ(車両サイズ・荷箱容積)
- 車両サイズ:2t/3t/4t/7t/10t
- 荷箱容積:4立米/5立米/6立米/8立米/10立米/それ以上
造園業では、狭い道や公園内を走行することが多く、2t車・3t車が主流です。
荷箱容積は4〜6立米が扱いやすく、満載でも重量オーバーになりにくいのが特徴です。
現場の声(造園業経営者より)
- 「従業員が高齢化してきていて、トラックやダンプの荷台に剪定枝を積み込む作業が重労働で大変」
→ 塵芥車なら積込み高さが人の腰の位置ほどで済み、投入口へ枝を投げ入れるだけなので、体力的な負担を大幅に軽減できます。 - 「人手不足で仕事の効率を上げるためにも塵芥車を導入したい」
→ 圧縮機構によって積載効率が向上するため、少人数でも大量回収が可能になります。 - 「トラックやダンプだと処分場まで2〜3往復しなければならないが、塵芥車だと1回で済む」
→ 運搬回数が減ることで、時間・燃料費・人件費の削減につながります。
2. 造園業での向き・不向き
造園業では「2t車/プレス式/強制排出式」が比較的多く使われますが、現場条件によって最適解は異なります。
- 個人宅の庭手入れが多い場合
軽トラックや小型ダンプで十分対応可能。塵芥車はオーバースペックになる場合も。 - 公共緑地や街路樹管理が中心の場合
かさばる剪定枝を効率的に処理できるプレス式が有利。圧縮機能で運搬回数を削減可能。 - 広範囲での現場巡回・回収が多い場合
小型で機動性の高い車種を選び、狭い道路や住宅街でも取り回しやすい構成が望ましい。
3. 導入形態の選択肢
導入方法 | メリット | デメリット |
新車購入 | 最新機能・長期使用可能・故障リスクが低い | 初期費用が高い |
中古車購入 | 導入コストを抑えられる | 整備履歴・残寿命の確認が必須 |
レンタル | 繁忙期だけ利用可能・維持費ゼロ | 長期利用は割高・仕様が限られる |
4. まとめ
自社の作業内容、現場環境、繁忙期の稼働状況に合わせた塵芥車を選ぶことで、
作業効率向上・コスト削減・故障リスク低減の3つを同時に実現できます。
導入前には、「どの現場で・何を・どのくらいの頻度で回収するのか」を明確にすることが、失敗しない選び方の第一歩です。
💬 次回予告
次回は「造園業ならでは!剪定枝・草木回収で多発する塵芥車トラブル3選」をお届けします。
現場で起こりやすい具体的な故障と、その予防法を詳しく解説しますのでお楽しみに。