― 技能実習生面接を通じて見えた未来 ―
こんにちは。
井野口自動車整備工場の井野口です。
10月16日から18日の3日間、技能実習生の採用面接のためにフィリピンを訪問してきました。
この3日間で、現地の若者たちの「本気の想い」に触れ、
そして“人と人とのご縁の尊さ”を改めて感じることができました。

人と人のご縁を大切に ― 旅の目的
日本は今、深刻な人材不足の時代を迎えています。
自動車整備士という職業も、若者にとっては決して人気の高い仕事ではありません。
しかし、フィリピンでは違います。
「自動車整備士は憧れの仕事」として、誇りを持って目指す若者がたくさんいます。
今回の渡航の目的は、これから一緒に未来をつくっていける仲間を見つけること。
そしてもう一つ――
私の夢である「日本のパッカー車で、フィリピンのゴミ問題・環境問題に貢献したい」という想いにもつながっています。
実は今回は、妻と息子、娘の4人でフィリピンを訪れました。
子どもたちにも、フィリピンの若者たちが持つ“ハングリー精神”を肌で感じてほしかったのです。
マニラで感じた“笑顔の力”

フィリピンに行くたびに感じるのは、若い人が多く、街全体がとてもエネルギッシュであること。
そして何より――みんな笑顔なんです。
経済的な豊かさで言えば日本の方が上かもしれません。
でも、物質的な豊かさと心の豊かさは反比例しているのかもしれません。
彼らの笑顔には、人を前向きにさせる“力”があります。
交通事情も印象的でした。
信号が少なく、“車の頭を入れたもの勝ち”のような暗黙ルール。
ジプニーやトライシクルがクラクションを鳴らしながら走る街の風景。
「日本人の僕には運転できないな」と笑ってしまいました。
空港で出迎えてくれたフィリピン人のソンさん。
彼は元技能実習生で、今は日本語学校の先生。
3日間、私たち家族をサポートしてくれて、たくさんの話をすることができました。

人生を懸けた面接 ― 若者たちの覚悟
面接には7人の候補者が来てくれました。
そのうち2人を採用しましたが、全員が真剣でした。
みんなが口をそろえて言うのです。
「家族のために働きたい」
「兄弟姉妹の学費を支えたい」
「日本で働くことが夢です」
私は事前に履歴書をすべて目を通し、11問の質問を準備して臨みました。
質問の内容は、人生観や価値観、人としての芯を確かめるもの。
質問に答える彼らの姿は、緊張の中でも真剣そのもの。
私は答えの内容だけでなく、目の奥や所作、態度からも“人となり”を見て判断しました。
採用を伝えた瞬間、涙を浮かべながら見せてくれた最高の笑顔――
その光景は、何度見ても胸が熱くなります。
「家族のように迎えたい」― 経営者としての責任
採用を伝えたときのあの笑顔を、絶やさない職場環境をつくりたい。
日本で働く間、家族と離れて暮らす寂しさを少しでも和らげたい。
そんな想いを強く感じました。
採用者2人と握手を交わした瞬間、
「この出会いは奇跡だ」と感じました。
世界中の国の中から日本を選び、
数ある企業の中から井野口自動車を選んでくれた――。
だからこそ、私は経営者として決意しました。
「日本に来てよかった」「井野口自動車に来てよかった」と思ってもらえるように、
技術面でも人としても、期待を裏切らない社長でありたい。

夢を繋ぎ、夢を育む
フィリピンの若者たちの夢を聞いて、改めて思いました。
夢に「大きい・小さい」はなく、
「良い・悪い」もありません。
「日本で働くことが夢」
「家族を支えることが夢」
――それは立派な夢です。
彼らの夢を応援しながら、
日本での生活を通じて環境が変わり、
自分の可能性に気づき、
さらに大きな夢を描くようになってくれたら嬉しい。
そしていつか、
「日本のパッカー車で母国の環境問題を改善したい」
そんな志を持つ仲間が生まれたら――
それは私にとって最高の喜びです。
何を成し遂げるかも大事ですが、
誰と成し遂げるか。
これが、私が最も大切にしていることです。
マニラの街角で見た“働く車”

帰国前、マニラの街で一台のパッカー車が走っているのを見かけました。
それは日本製ではありませんでしたが、
街の清掃を担い、懸命に働いていました。
その姿を見て思いました。
「この街にも“働く車”が、誰かの生活を支えている。」
いつかこの街を、日本の技術で、
そしてフィリピンの仲間たちと一緒に、
もっときれいで誇れる場所にしていきたい――。
この出会い、この経験を、
確かに未来へとつなげていきます。



