こんにちは。井野口自動車整備工場の井野口誠です。
前回は「造園業に最適な塵芥車の種類と選び方」を解説しましたが、今回は造園業特有のトラブルにスポットを当てます。
実は、塵芥車は用途や積み込む物の種類によって、故障しやすい箇所や原因が大きく変わります。
造園業では特に、剪定枝や草木の性質が塵芥車に独特の負担をかけています。
ここでは、現場で頻発する代表的なトラブル3つと、その原因・対策を紹介します。
1. 積込ボタンを押しても作動しない
現場でよくある声
「草木を収集して積み込みしようとしたら、積込板が全然動かない!」
主な原因
- 緊急停止スイッチの誤作動(物理的または電気的な故障)
- 排出後にパッカーを閉めてもロックフックが掛かっていない
- 積込ボタンスイッチの不具合
- 室内の「積込⇔排出」切替スイッチの不具合
対策
- 運行前点検で各スイッチの状態と動作確認を行う
- 運転席のパッカーロック作動ランプとロック状態を目視確認
- 作業後は荷箱の中や油圧装置周辺を必ず清掃
- 違和感や異音があれば直ちに整備工場へ相談
2. 排出後にパッカーが閉まらない
現場でよくある声
「ゴミを排出したあと、パッカーが閉まらない!」
「閉まらなくて走行できず、帰れない!」
主な原因
- 降下防止スイッチがON(誤操作の可能性あり)
- パッカー開閉スイッチの異常
- 開閉用シリンダの安全弁不具合
- 開閉系統の油圧異常(作動油漏れなど)
対策
- 正しい操作手順を作業員全員が熟知する
- 油圧配管・ホースの点検と作動油の漏れやにじみの確認
- 異常時は放置せず、すぐ整備工場へ相談
3. 架装部への過負荷による破損
現場でよくある声
「太い枝を巻き込んだら、急に異音がして動かなくなった…」
「積み込みプレートが変形してしまった!」
主な原因
- 塵芥車は破砕機ではなく、収集運搬用の車両であることを無視した無理な使用
- 植物の発酵による高熱・酸化促進でボディが腐食し劣化
- 過大荷重による油圧機構や構造部材へのダメージ
対策
- 直径10cm以上の木は巻き込まないなど、社内ルールを設定
- 定期的に洗浄・清掃を行い、残留物を残さない
- 腐食や摩耗が見られたら早めに補修
専門家コメント
造園業の塵芥車は、一般ごみ(生ごみ)回収車よりも腐食環境が厳しいケースが多く見られます。
植物の発酵は高熱を発し、金属の酸化を早める可能性もあります。
「鉄のほうが枝や草木より硬い」と思いがちですが、投入方向や枝の太さ・硬さによっては、短期間で機械を損傷させることがあります。
日常点検・清掃・積込方法の工夫(社内ルール化)だけで、トラブル発生率は大幅に減らせます。
📌 まとめ
- 「作動しない」「閉まらない」「破損する」が三大トラブル
- 操作手順の徹底、日常点検、無理な使用を避けることが最大の予防策
- 社内ルールと定期整備で、繁忙期の稼働率を守る
💬 次回予告
次回は「草木の水分が塵芥車を傷める理由」をお届けします。
見た目は軽そうな枝葉や芝生が、なぜ車両や油圧機構に負担をかけるのか?
現場でできる簡単な水分対策や寿命を延ばす工夫もご紹介します。