猛暑が続く今年、塵芥車のオーバーヒートに要注意!
こんにちは。
塵芥車専門の整備士、井野口 誠です。
少し長文になりますが、とても大切なことですので、ぜひ最後までご覧ください。
今年の夏は、例年になく早い時期から猛暑日が連続しています。
私たちの整備工場にも、
「エンジン冷却水温が上昇しすぎて動かなくなった!」
というオーバーヒートの緊急修理が相次いでいます。
では、なぜ塵芥車はとくにオーバーヒートしやすいのでしょうか?
今回は、現場で実際に起きている状況と、その予防策を「夏のシーズンニュース」としてお伝えします。
■ なぜ塵芥車はオーバーヒートしやすいのか?
塵芥車(パッカー車)は、他のトラックと異なり、
🚛 走行せずに作業する時間が長いという特性があります。
特に積込み作業中には、以下のような条件が重なります:
- エンジン回転数が高くなる(PTO〈動力取出装置〉作動のため)
- 走行風による冷却効果が得られない
- 作業員は車両後部で作業しているため、水温計に気づきにくい
このような環境下では、エンジン内部の熱が逃げにくくなり、冷却が間に合わずオーバーヒートを起こしやすくなるのです。
■ 【要注意】冷却系トラブルの主な原因と対策
① ラジエーターの目詰まり
塵芥車は、ゴミやホコリが多く舞う現場で使用されます。
ラジエーターの網目に紙くずや粉じんが詰まることで、冷却効果が著しく低下します。
対策:
- ラジエーターを定期的にエアブローや水洗いで清掃
- エアクリーナーのチェックも忘れずに実施
② 水温計の見逃し
作業中は運転席を離れていることが多く、
水温計の異常に気づかないまま作業を続けてしまうケースがあります。
対策:
- 水温計・警告灯・警告ブザーの作動確認を日常点検で実施
- 「20分に1回は水温計を確認する」など、現場ごとのルール化も効果的
③ 冷却水(LLC)の劣化・不足
冷却水(LLC:ロングライフクーラント)は、量が足りているだけでは不十分です。
品質が劣化していると、本来の冷却性能を発揮できません。
冷却水が劣化すると:
- 沸点が下がり、熱をうまく逃がせなくなる
- 冷却通路内にスケール(沈着物)が発生し、流れが悪くなる
- 腐食抑制剤の効果が薄れ、ラジエーターやウォーターポンプにダメージが出る
対策:
- 冷却水は2年に1回を目安に定期交換
- LLC濃度や劣化状態をテスターで診断
- 減りが早い場合は、冷却系の漏れや異常の兆候も点検
■ 現場の声:「気づいたときには、もう遅い」
実際のトラブル事例では、こんな声が聞かれます:
「朝は問題なかったのに、午後になって急に水温が上がった」
「回収作業後に移動しようとしたら、エンジンが止まってしまった」
たった1度のオーバーヒートで…
- 数日間の稼働停止
- 高額な修理費用
- 顧客からの信頼低下
といった大きな影響を受けることもあります。
だからこそ、“予防整備”は最大のコスト削減策なのです。
■ この夏、あなたの塵芥車は大丈夫ですか?
- ✅ ラジエーターの清掃はされていますか?
- ✅ 冷却水の交換や点検は定期的に行っていますか?
- ✅ 水温の異常に気づける仕組みや運用ルールはありますか?
ひとつでも不安な項目があれば、
夏本番前に点検・整備をおすすめします!
■ お困りの際は、いつでもご相談ください!
井野口自動車整備工場では、以下のような塵芥車専門サービスをご提供しています:
- 🔧 冷却系統の点検・整備
- 🌀 ラジエーター洗浄
- 🔍 オーバーヒートの診断
「うちのパッカー車、大丈夫かな…?」
と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。
☀️猛暑にも負けない!
あなたの塵芥車を一緒に守ります!
■ 【見落とし注意】油圧装置のオーバーヒートにも要警戒!
エンジンの冷却水温だけでなく、油圧装置の熱トラブルにも注意が必要です。
実は数年前の夏、40℃を超える猛暑が続いた際、
私たちの工場にも油圧系トラブルの相談が相次ぎました。
パッカー車の油圧装置に使われている作動油(油圧オイル)には、
【適正な作動温度】があり、上限はおおよそ80℃前後とされています。
🔥 高温によるリスク
- 連続作動が続くと油温が上昇し、作動油タンクが火傷しそうなほど高温になる
- 作動油の性能が低下し、圧力不足・動作遅延・誤作動が発生
- ゴム製のシール部品が高温によって劣化・変形・破損する
その結果:
- 作動油の漏れ
- リフトや積込み部の動作不良
- 急な停止や誤作動
といった、作業効率の低下や重大な故障につながる恐れがあります。
❄️ パッカー車には「オイルクーラー」がない
エンジンにはラジエーター(冷却装置)が備わっていますが、
パッカー車の油圧装置には、基本的にオイルクーラーが搭載されていません。
つまり、作動油の温度管理は、運用上の工夫がすべてです。
✅ 対策と予防のポイント
- 作動油は使用頻度に応じて1〜2年ごとに交換
- 作業中は油圧機器の動作音・温度変化に注意
- 猛暑日は10分ごとに一時休止するなど冷却の“間”をつくる
- タンクが極端に熱くなったら、無理に作業を続けず休ませる
🛑 作動油タンクでの火傷にも注意!
実際の現場では、作動油タンクが素手で触れないほど高温になり、火傷を負った事例も報告されています。
安全のためにも、油圧装置の暑さ対策は欠かせません。
■ 最後に:エンジンも油圧も“冷やす意識”を!
夏場の塵芥車には、
- ☑ エンジン冷却系の点検
- ☑ 油圧装置の保守と作動油の管理
- ☑ 暑い日の運用ルールの工夫
この3つをしっかりそろえておくことが大切です。
「パッカー車が熱中症になる前に、私たちが守る」
そんな意識で、暑さに負けない夏の稼働を一緒に実現していきましょう!
📘 記事執筆:井野口 誠
(塵芥車専門整備士/井野口自動車整備工場)