この夏、DPD・DPF・DPRマフラートラブルが増えています。
こんにちは。
井野口自動車整備工場の井野口です。
これまで3回にわたり、東京都からご相談いただいた、造園関係のお仕事でパッカー車を使用されているお客様の修理事例をご紹介してきました。
ブログを読んで一本のお電話をいただいたことから始まり、
実際に車両をお預かりして点検。
DPDマフラー内部の触媒破損と、排気シャッターバルブの不具合が見つかりました。
そして、必要な部品を交換し、修理後の状態を確認。
インジェクターについては異常が見られなかったため、交換しないという判断をしました。
無事に修理を終え、お客様にも東京都から車両を引き取りに来ていただき、納車することができました。
遠方にもかかわらず、弊社を信頼して修理をお任せいただけたこと、本当にありがとうございました。
■ この修理を終えて、どうしても気になっていることがあります。
それは、
「今年の夏は、DPD・DPF・DPRマフラーのトラブルが多い。」
ということです。
DPD・DPF・DPRはメーカーによって呼び方が違いますが、いずれもディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる煤などを捕集し、きれいにするための装置です。
弊社でも、この夏はメーカーを問わず、こうした排気ガス浄化装置に関するトラブルが例年以上に多いと感じています。
■ 私だけの感覚ではありませんでした。
今回、交換するDPDマフラーを手配した際、リビルト部品を専門に扱うメーカーの方とお話しする機会がありました。
そこで私が、
「今年の夏、DPDマフラーのトラブル、多くないですか?」
と尋ねたところ、
「今年の夏は特に多いです。通常の約1.5倍くらい出ていて、在庫がなく、製造が追いついていない状況です。」
という話を聞きました。
やっぱり多いんだ。
私自身が現場で感じていたことと、部品を供給する側が感じていることが一致しました。
■ なぜ、この夏にトラブルが増えているのでしょうか?
ここについては、私はまだ**「猛暑がDPD・DPF・DPRトラブル増加の直接的な原因だ」**と断定するつもりはありません。
ただ、パッカー車という車両の使われ方を考えると、夏場は非常に厳しい環境になることは間違いありません。
パッカー車は、ただ道路を走るだけの車ではありません。
ごみを積み込むときには、その場に停車した状態でエンジンを動かし、積込み装置を何度も作動させます。
その際、エンジン回転数も上昇します。
しかし、車は走っていません。
つまり、
走行することで得られる風による冷却効果が少ない状態で、エンジンに負荷をかけて作業している
ということです。
そこへ今年のような厳しい暑さが重なります。
パッカー車にとって、夏はかなり過酷な季節だと思います。
■ ほこりや砂ぼこりにも注意が必要です。
もう一つ、ぜひ確認していただきたいのが、
ラジエーターまわりの汚れです。
廃棄物収集や造園などの現場では、ほこりや砂ぼこり、細かなごみなどが舞う環境で作業することがあります。
それらがラジエーターの細かな網目に付着して目詰まりすると、風が通りにくくなり、冷却する力が低下します。
暑い夏に、
「エンジンを冷やしたいのに、十分に冷やせない。」
そんな状態をつくってしまいます。
日常点検とあわせて、ラジエーターまわりが汚れていないかも確認していただきたいと思います。
■ パッカー車ならではの、もう一つの注意点
積込み作業をしている間、運転手さんは車外にいることがあります。
ということは、
運転席のメーターパネルを見ていない時間がある
ということです。
もし作業中に水温が上昇していても、その変化にすぐ気づけない可能性があります。
パッカー車は普通のトラックとは違った使われ方をするからこそ、
「パッカー車としての使われ方」を考えた点検やメンテナンス
が必要なのだと思います。
■ そして、夏期休暇直前にも……
弊社は明日8月9日から16日まで、夏期休暇に入ります。
ところが、この長期休暇を目前にして、DPD・DPF・DPRマフラーに関するトラブルが駆け込みのように相次ぎました。
そして昨日、8月7日。
お客様の車両が佐野市で突然エンジン停止。
その後、再始動できなくなり、弊社でレッカー搬送してきました。
車両は三菱ふそうキャンターです。
今年の状況から、
「今回もDPFマフラーの詰まりではないか?」
と考えました。
しかし、点検を進めると、どうもそれだけではなさそうです。
エンジン内部に損傷が起きている可能性が高いと判断しました。
DPFマフラーの入口側を確認すると、煤で真っ黒な状態。
DPFの詰まりと今回のエンジン内部の損傷にどのような関係があるのか。
バルブやエンジンのタイミングなど、内部で何が起きたのか。
いくつか考えられる原因はあります。
しかし、現時点では断定できません。
■ 原因究明より、早く仕事に戻すことを優先する。
もちろん整備士としては、
「なぜ、このエンジンが壊れたのか。」
最後まで調べてみたい気持ちはあります。
しかし、お客様の車は仕事で使う車です。
エンジンを分解し、さらに時間と費用をかけて原因を追究したとしても、最終的にエンジン交換が必要になる可能性が高い。
それならば、
原因究明に時間をかけるより、一日でも早く車を仕事に戻す。
今回は、そちらを優先することにしました。
これ以上の分解調査は行わず、エンジン交換のお見積りを作成し、夏期休暇明けには載せ替え作業に取りかかる予定です。
これもまた、整備士としての一つの判断だと思っています。
■ 長期休暇前だからこそ、お伝えしたいこと
これからお盆休みに入る整備工場や部品会社も多くなります。
一方で、廃棄物収集運搬業など、長期休暇中もパッカー車を動かさなければならない仕事があります。
だからこそ、
いつもと違う変化を、そのままにしないでください。
警告灯が点灯している。
マフラー再生の回数が増えた。
再生に時間がかかるようになった。
以前より力がない。
異音がする。
水温がいつもより高い。
そんな小さな変化があったら、無理に使い続けず、早めに点検してください。
■ 4回の現場ドキュメントを終えて
今回のシリーズは、
東京から一本のお電話をいただいたことから始まりました。
一台のパッカー車を診断し、修理し、無事にお客様へお返しする。
その過程を書いてきました。
そして偶然にも、その間に弊社ではDPD・DPF・DPRマフラーのトラブルが相次ぎました。
改めて感じるのは、
「壊れてから直す」だけでは足りない
ということです。
警告灯が点く前。
車が止まる前。
高額な修理になる前。
車が発している小さな変化を見つける。
そして、その原因をできるだけ正確に診断する。
これからの整備には、「直す技術」と同じくらい「診る力」が必要になる。
私はそう考えています。
■ 次回から「現代ディーゼルエンジン」を分かりやすく解説します。
今回の記事には、
DPD、DPF、DPR、インジェクター……
いろいろな言葉が出てきました。
「そもそもDPFって何?」
そう思った方もいるかもしれません。
私自身、分からない言葉が次々に出てくる文章は、読む気がなくなってしまいます(笑)。
だから次回からは、
現代のディーゼルエンジンが、なぜ複雑になったのか。
そして、
なぜ昔のディーゼル車にはなかったようなトラブルが起きるのか。
できるだけ難しい言葉を使わず、一つずつ解説してみたいと思います。
まずは、
「DPD・DPF・DPRマフラーって、そもそも何をしている装置なの?」
というところから始めます。
インジェクター(燃料系)。
EGR(排気ガス再循環装置)。
SCR(尿素水を使って排気ガスをきれいにする装置)。
これらについても、順番にお話ししていきます。
車の仕組みを少し知ることが、壊れる前に気づく第一歩になる。
そんなシリーズにしていきたいと思います。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
皆さまも、どうぞ安全に夏をお過ごしください。