こんにちは。塵芥車(パッカー車)専門の整備士、井野口です。
前回の記事では、DPDマフラーを詰まらせる「燃えない灰=アッシュ」の存在について解説しました。
今回は、そのアッシュを大幅に減らすことができると言われる 「アッシュフリーオイル」 を取り上げます。
■ なぜアッシュフリーオイルが必要なのか?
DPDマフラーに溜まるアッシュの主な原因は、エンジンオイル中の添加剤です。
従来のエンジンオイルは、エンジンを守るためにカルシウムやマグネシウムなどの金属系添加剤を多く含んでおり、これが燃え残って灰となり、DPD内部に堆積します。
結果として…
- 排気抵抗の増加
- 燃費悪化
- 出力低下
- 頻繁なDPD洗浄や交換
といったトラブルを引き起こしていました。
そこで登場したのが 「アッシュフリーオイル」 です。
■ アッシュフリーオイルのメリット
アッシュフリーオイルは、金属系添加剤を使わずに配合設計された特殊なエンジンオイルです。
その最大のメリットは――
- アッシュの発生を大幅に抑制
燃えない灰がほとんど発生しないため、DPDマフラー内部の堆積が激減。
→ DPD寿命が延び、洗浄や交換の頻度が下がります。 - 燃費改善・パワーダウンの抑制
DPDが詰まりにくくなるため、排気の流れがスムーズになり、燃費悪化や出力低下を防げます。 - メンテナンスコストの削減
DPD洗浄や交換は高額な整備です。アッシュフリーオイルを使うことで、DPD関連の修理コストを大幅に減らせる可能性があります。
さらに、DPDマフラーの詰まりが減ることで インジェクターの補正負担も軽減 → インジェクター寿命も延びる → 修理コスト全体を抑制 できます。 - 車両稼働率の向上
修理や洗浄のために車両を止める時間が減り、現場での稼働率アップにつながります。
■ アッシュフリーオイルのデメリット・注意点
もちろん、アッシュフリーオイルにも注意すべき点があります。
- 添加剤が少ない分、保護性能の低下リスク
従来オイルに含まれていた金属系添加剤(清浄剤・中和剤・摩耗防止剤)が減るため、- 酸化安定性
- 摩耗防止性能
- 清浄分散性
が従来オイルより劣る可能性があります。
- 使用環境によっては不向きな場合も
高温・高負荷が続くような現場(山間部での長時間稼働など)では、オイルの保護性能が不足するリスクがあります。
→ 必ず車両メーカー推奨スペックを確認することが大切です。 - 価格が高い
アッシュフリーオイルは特殊な設計のため、従来のエンジンオイルより割高。
ただし 「DPD寿命延長」「修理コスト削減」 を考えれば、十分に費用対効果は期待できます。
■ どんなユーザーに向いているか?
- DPDトラブルで悩んでいるユーザー
- 長く車両を大切に使いたい経営者
- DPD洗浄や交換にかかるコストを削減したい会社
こうしたユーザーにとって、アッシュフリーオイルは 「新しい選択肢」 となります。
まとめ
「燃えない灰=アッシュ」は、DPDマフラーの寿命を縮める大きな要因です。
アッシュフリーオイルを使うことで――
- アッシュ発生を抑え、DPD寿命を延長
- メンテナンスコストを削減
- 車両の稼働率を向上
といったメリットが得られます。
ただし、添加剤が少ない分の保護性能やコスト面には注意が必要です。
つまり、アッシュフリーオイルは「万能」ではありませんが、DPDトラブルに悩むユーザーにとって有効な一手であることは間違いありません。
次回は、いよいよ 「燃料系添加剤 × アッシュ対応オイル」 を組み合わせた最新のメンテナンスサイクルをご紹介します。
燃料に潜むデポジットを抑える《リボーン改》、
アッシュの発生を抑制する《アッシュフリーオイル》。
この2つを組み合わせることで、
- 故障ランキング上位を占めるDPD・インジェクター・ターボ・EGRのトラブルを予防
- 高額修理のリスクを減らし
- 車両を止めない安心稼働を実現
まさに 「壊れてから直す」から「壊れる前に守る」 への一歩となる整備サイクルです。
どうぞお楽しみに!